黒田見聞録

黒田ロクの見聞きしたこと、思うこと

そんな育児に騙されて

まいど馬鹿馬鹿しいおはなしをひとつ。黒田ロクです。上から読んでも下から読んでもクロダロク、ロクでもない話しか書きません。しばしお付き合いを。

 

38時間の陣痛のち帝王切開という運びになりまして、無事にムスメちゃんを出産し終えまして、なんやかんやでもう7ヶ月です。ムスメちゃんはすくすく元気に育っています。間違えました、ぷくぷく元気に育っています。今日予防接種で先生に「強そうな赤ちゃんやねえ」と言われました。名実ともに力士系赤ちゃんだよ、横綱級!どすこい!

 

さて、産後まもなくから今に至るまで。折に触れては抱く感想があります。

それは

「育児って、ともすれば新興宗教がかってきちゃうな」

ということ。

最初そう感じたのは出産した病院でのことで、なにしろ皆んな同じパジャマを着て院内をフラフラ歩いて、赤ちゃんを抱っこしたりあやしたり、オムツやお風呂の講習を一緒に受けて、時間が来たら婦長さんのお話なんかを聞いて、おんなじとこで涙したり笑ったりするわけです。

「ウワーなんかこれ新興宗教の信者が共同生活してる施設みたい。絶対言えないけど」

ハラキリ直後のわたしは、ちゃっかりそんな意地悪いことを思ってたわけです。

 

産後いろいろと大変で引きこもっておりましたが、少し前に市が主催する赤ちゃん広場的なやつに行ってきました。市内の母子が1ヶ月に1回山ほど集まってリトミックしたりお話ししたりするやつ。

市内某所の会議室で、似たような格好をした「ママ」たちが、これまた似たような格好をさせた「ベビー」たちと所狭しと膝を寄せ合い、リトミックしたりお話ししたり。ぼろぼろジーンズに旦那のTシャツはわたしだけやった。ドレスコードあるなんて聞いてへんぞ。

なんだかほんわか幸せな感じを暗黙の一致で共有するこの感じ。常に安定して微笑を浮かべているこの感じ。そうか、なんかこれも新興宗教っぽいんだよな。

ちなみにこういう集まりの際参加者は

「苦なく最後まで居られる人」

「コミュ障すぎて誰とも話せなかった、などと言いながら最後まで居られる人」

「その場に居るとなぜかめまい、動悸など体調不良を起こし途中退室する人」

の三種類に分かれると思うんだけど、最後のカテゴリーに属する人が本当のコミュ障です。二番目のカテゴリーのひとたち!!コミュ障コミュ障言ってるうちはコミュ障ですらないんだよ!真のコミュ障はな、つらいんやぞ!コミュ障とさえ言えへんのやぞ!!真のコミュ障って誰や。私か。すみません。負け犬の遠吠えです。トモダチホシイ。

 

それまでは病院でママたちと番号を交換したり、子育て広場で友達を作らねば!と思っては毎度撃沈したりしていましたが、ここで私は諦めました。うっすら幸せなオーラを纏いつつ無難に小綺麗なお洋服を着て「ママ」として生きる。そんな路線から早々とリタイアすることにしたのです。ムスメちゃんまだ7ヶ月よ。この先何年ママやらなきゃいけないか分かってんのか!たった7ヶ月で諦めて大丈夫なんか自分!

しかし、産後人間不信に拍車がかかり、すっかり弱虫になった私からしたら、彼女たちは鉄壁の鎧を纏い武器を手にした「武装ママ友集団」でした。アマゾネスかよ。

バカにしてるわけではありません。正直、彼女たちは偉いと思います。きっとそれまでは、もっと個性を打ち出す格好をしていたり、自由奔放な会話を楽しんでいたのでしょう。しかし彼女たちは悟るのです。子を産んだからには、私は私!では済まされない。モノトーンと差し色中心のママっぽい服=鎧に身を包み、離乳食のレシピや寝かしつけのノウハウなどのママっぽい会話=武器を持って戦わなければならない。無個性大国ニッポンで、自由奔放なママは歓迎されない。公園、スーパー、ご近所さん…外に出れば7人の敵が居ると思え!ママになった私よ!武装せよ!戦うのだ!

この至極当然な流れにうまく乗ることが出来るママたち。義父や義母の愚痴をツイッターで吐いても、いつも笑顔を絶やさないママたち。彼女たちにできるのは「受け流すこと」。わたしにはぜったいに出来ないこと!羨ましくもあり眩しくもあり。メインストリーム・ママンに幸あれ。戦う彼女たちの幸せを守りたもう。

 

ベルトコンベアからはみ出た人間が生きていけないニッポンですが、ベルトコンベアからはみ出てかれこれ30年、はみ出たどころかむしろ最初から乗っていなかったんじゃないか説が出てきたわたし。そんなノン・ベルトコンベアーママに育てられたムスメちゃん、どうなっちゃうのかなーと正直不安ではあります。

けどまあわたしだってなんとか生きてるし、かなり幸せだし、大変なこともあるけど概ねなんとかなってるし!大丈夫だろ!と楽天的に捉えております。幸い丈夫な横綱級ベイビーだからな。どうか心までたくましく育っておくれ。

 

ずっと心に留めていて、不安になると必ず引っ張り出してくる言葉があります。某女子に産前

「生まれてきてよかったと思う?」

と聞いたときのことです。実は旦那さんに出会うまで私は毎日「死んだ方がマシだけど死なないから、生かされてるから生きているだけ」って状態だったわけで。(ね…コミュ障でしょ…笑)ムスメちゃんを産む前に「人っ子一人、ほんとに産んでしもてええんか」と不安になったのです。

「わからんけど、すごく愛されて育ったなあと思う」

その某女子のアンサーが、私の中では完璧でした。そうか、それだけだな。とにかくしっかり愛してあげる。本当にそれだけだ。逆に親ってさ、それぐらいしか出来ないんだよな。

 

いろんなところからクレームが付きそうですけどね、産んでみて、まだまだたった数ヶ月ですけど育ててみて、親って本当に「愛すること」

「必要な環境を整えること」そんくらいしかできないと思います。だからこそ、難しい。愛を履き違えてしまえばそこで終わりだから。

愛する人が見守る安全な環境で、子供は自分で学んで大きくなって、そして外に出て行く。それだけなんだろなあ。

 

なんか最初の育児は新興宗教みたいって話からずれちゃった。いいんだ、わたしそもそも浄土真宗だから。なんだそれ。ロクでもねえな!ロクでした!またお会いしましょう。

くろだ母になるのだ

毎度ロクでもないおはなし。
ブログはじめました。黒田ロクです。下から読んでも上から読んでも黒田ロクです。臨月の妊婦さんです。だんなさんの隠してたポテトチップスを隠れて食べだしたら止まらなくなったわたしです。ぜんぶ食うてもた。あとでコンビニに買いに行かんと。

今回は、こないだの検診のはなし。

 

子宮口、1センチくらい開いてるかな。柔らかくなって、すごくいい状態。このままがんばってこう。
先生がそう言ったとき、お腹の下の方からワァーーーっと嬉しい気持ちが湧いてきて、そのふつふつ沸騰した小さな嬉しさを集めて、バンザーイ!と両手を突き上げたい気持ちになった。まだ産んでもいないのに、せっかちだなあ。陣痛も出産も、これからだよ。
出産間近、臨月。ここのところずうっと調子が悪かった。もっと言えば、妊娠期間中どこかに必ず、なにかしらの堪え難い痛みとか、気持ち悪さとか、しんどさみたいなマイナートラブルがあって、常に末期の病人みたいな状態だった。特に妊娠7ヶ月を超えてからは、最悪の一言に尽きる。調子がいい日、動ける日の方が珍しくて、よく旦那に「あたしゃもう要介護認定だよ」と愚痴をこぼして泣いていた。
臨月に入ると、マイナートラブルは痛みに特化し出して、本気で動けないくらいの激痛と常に同居していた。一歩足を踏み出すと、お腹に激痛が走る。そろそろとまた一歩踏み出す。激痛が走る。
「陣痛でないの?」と疑ってしまうようなその痛み、例えて言うならお腹の中の腸とか胃とかが、ボロゾーキンのようにギュギュギュゥ!!と絞られているみたいなかんじ。腸の端と端を持って、せーの!でひねりあいっこしたら、こんな痛みだろうなあと。わかんないけど、男の人が急所蹴られた時とかこんな感じかもしんない。

それでもがんばらんといけんのが母体、母ちゃんってもんで。痛い痛い!あいたただ!!とか言いながら必死で動いた。ヨガもしたし、スクワットも、ぞうきんがけも。お産にいいと言われることを一生懸命やった。母は強しと言うけどそうじゃない。言ってみりゃヤケクソ。はよ産まれてきてくれ、はよ会いたい。やらなしゃーないならやるで!スポ根や!熱血や!目指せオリンピックや!
ほんと、妊娠出産ってわかりやすく言えば女の子は誰でも「あしたのジョーになれます」 ってことだと思う。けど男の人は大変だよね。みんながみんな丹下さんにはなれないから痛いやら辛いやら泣いたり怒ったりの奥さんの横で、オロオロしてるしかない。よく「男はなにもできへんから」と言うしうちの旦那もそう言うけど、何もできない、自分は無力だということに耐え一緒に居るだんなさんだって大変だよなあと思う。だいたい男なんて、プライドのかたまりなのに。十月十日役立たずと言われてじっと耐えているようなもんだ。
そんな「あしたのジョー期」を経てもいっこうに開く気配のなかった子宮口。それが先生曰く「すごくいい状態」になったのです。うれしくて小躍りしちゃう、初めて世界の舞台に立てる記録を出したアスリートみたいな感じ。このままがんばって記録伸ばしてこう、オリンピックという舞台(つまりは分娩台!)に向けて朝夕のスクワットにも気合が入ります。
とにかく赤ちゃんに、はやく会いたい。

 

今回の妊娠を通じて思ったこと。「一生懸命生きてることって、絶対ウソつかない」。人生についてがんばったことって、必ず報われる。たいへんだったことって、幸せに姿を変えて戻ってくる。ありきたりなんだけど、ほんとそう思う。
ひどく凄惨な家庭に育ったわたし、振り返れば「命があってよかった」と思う場面が一度や二度ではない。不幸だったし、いつまで続くかわからん地獄みたいな状態だったこともある。人生なんてやめちゃいたかった。けど、やめないでがんばってみた。とりあえずがんばろう、とりあえず今日生きとこう。どうにもならないことは仕方ない、けどウソはつかずに、お日さまに顔向けできるようにだけがんばろう。
そうやって生きてきて、だんなさんに出会い。結婚して、子供を授かり。
欲しくて欲しくて、それでもずっと手に入らなかった「あたたかな家庭」ってもの、気がつけばそこの真ん中にわたしがいて、そしてそこにずぅっと居ていいんだよなんて、いま考えても涙が出る。信じられないけど実感もないけど、あたたかさだけはずうっと感じてる。それが家庭ってことだと思う。

 

お日さまに背を向けず、少しずつでも歩き続けていれば、夜は明ける。明けない夜なんて、ないんだ。

 

そう思える日が来るなんてほんとうに奇跡みたいなことだから。世界でいちばん大事で大好きなだんなさんに感謝をして。

赤ちゃんに、はやく会いたいなあ。

そんな妊娠38週、予定日はもうすぐです。